経営に正しいブランディングを。わかりやすく解説|ブランド シンキング

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経営に正しいブランディングを。わかりやすく解説

2017.09.27

蒙古タンメン中本に見るカテゴリーナンバーワンの成りかた。

勇気を持って、ターゲットを明確化している。 shibuya-2328029_1920

旨いメニューに忠実で誠実なキャッチコピー。

蒙古タンメン中本と言えば、都内中心に19店舗(2017.9現在)を構え、二代目・白根誠氏が登場する広告でお馴染みの激辛ラーメン。都内の店舗のある駅の近くには看板やポスターをよく見かけます。その広告を見ると、キャッチフレーズに「からうまラーメン日本一」と書いてあります。これまでも何度かブランド構築の究極系はカテゴリーをつくってナンバーワンになること。と書いてきましたが、そのお手本がこんな身近なところにあります。

ホームページによれば、「中本」とは先代の中本正氏を指し、板橋区にあった「中華料理中本」を発祥としているようです。先代の引退に伴い食べられなくなった中本の味を復活させようと、二代目・白根氏の情熱によってここまで展開されてきました。いつ頃から「うまからラーメン日本一」を使用したかはわかりませんが、先代時代からの熱狂的なファンの多さ、そして白根氏が食べ歩いたその数と味への自信から「うまからの分野で日本一」という意味で使用したのかもしれません。

どういう経緯であれ、この「うまからラーメン日本一」というキャッチコピーに集約される意味は、ブランド論的に2つの大きな意味を持ちます。

1,ラーメンの中で「うまから」カテゴリーを定義した。
2,暗にターゲットを明確化している。

です。ラーメンは今や国民食で、地方やつくり手によってさまざまな味があります。無数にある「カテゴリー」の中で、「中華料理 中本」を起源とした1986年から続くこの「蒙古タンメン」を「うまから」カテゴリーのラーメンと定義したことが、蒙古タンメン中本のすごいところです。カテゴリーを定義することで、当然、ターゲットは明確化されます。まず、辛いのが苦手な人は来ないでしょう。熱い夏は不利になるかもしれません。しかし味に自信があり、そこに惚れ込んでいるほどの情熱があれば、それも意味のないことかもしれません。そこまでのこだわりがなければ、ここまでターゲットを明確化することはできません。でも明確化しているからこそ、「からうま」ラーメンを食べたくなったら、「中本」という想起が多くの人の頭の中に浮かび上がることになります。

もちろん実際に行ってみて、うまいからこそ、今もなお愛され、蒙古タンメンが続いていることになります。いくらカテゴリーを明確化して、そこで日本一だ、と叫んでみても、実際に品質がよくなければ、リピート(=ロイヤリティ)は生まれません。

蒙古タンメン中本の場合、もともと旨くて強烈なメニューがあって、それをどうアピールしようか、と考えて「うまからラーメン日本一」になったのかもしれません。そうであれば、とてもメニューに誠実です。だからブランド構築上、非常に多くの企業が迷う、ターゲットの明確化が自然とできたのかもしれません。しかしここにこそ、ブランド構築をしていく上での重要な示唆が詰まっているとも言えます。

 

fukasawa

むすび株式会社 代表取締役
深澤 了

ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター、BRAND THINKING編集長。日本ブランド経営学会副会長。2002年早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。2015年早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン酒チャレンジ2018銀賞、2019金賞、フランスKura Master2019金賞。埼玉県戸田市では「埼玉戸田・かけはし・純米吟醸微発泡」と、立て続けに日本酒をプロデュース。山梨県都留市ではネクタイブランド「TSURUIKI」の立ち上げも行う。クリエイティブ・ディレクター、コピーライターとしてFCC賞、日本BtoB広告賞、山梨広告賞など。雑誌掲載、執筆多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても"光る人材"が集まる採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。

むすび株式会社

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