組織の価値観がもたらす決定的な差別化。
競合ブランドが真似できないもの=組織。
例えば今日のケータイ電話のように、機能で差別化するということは、ブランドにとって最も基本的なことですが、機能での差別化や競争は、やがてコモディティ化を生み出すもとになり得ます。一方、組織のメンバー、文化、資産、能力などは唯一無二であるため、真似することはできません。今日のブランド論をつくったアーカーは「自社組織をもとに生み出された差別化ポイントや顧客関係基盤はどんなものであれ耐久力があり、競合ブランドへの抵抗力を持つ」と、『ブランド論』ダイヤモンド社(2014)の中で書いています。
さて、では組織の価値観はどのように「ブランド」に対して効果を発揮し得るのでしょうか。アーカーは次のようにまとめています。
1,価値提案を支援する。
2,エンドーサーとして信頼性を与える。
3,大いなる目標を生み出し、顧客関係の基盤とする。
1に関しては、ブランドの画期的な機能的メリットなどを、組織の価値観がサポートすることがある、という効果を言っています。つまり、顧客の組織自体へのイメージが「革新的」であれば、その商品も革新的で、高品質であろう、というイメージを抱きやすいということです。
2に関しては、組織の価値観が商品ブランドを「保証する」=エンドースするということです。例えば、これまでと異なるまったく新しい商品やサービスを聞きなれない全く新しいブランド名で発表する時、顧客がそのブランドを使用するのに、失敗のリスクを減らすということが言えます。例えば、KDDIがauブランドを発表したときは、「au by KDDI」でした。今はもうby KDDIが取れ、auだけになっています。
3に関しては、いわゆる組織の「ビジョン」と言い換えることができます。例えばタニタは「人々がよりよい食事で健康増進するのを助ける」ことを「大いなる目標」にすることで、料理本を出版し、レストランまで開店しています。
つまり、組織の価値観とは、企業文化とも言い換えることができます。そして企業ブランドが商品・サービスブランドへ及ぼす影響ともいいかえることができるでしょう。
とくに3に関しては、アーカーは、「その組織の大いなる目標に経緯や称賛の気持ちを抱くことで、顧客と組織のつながりが生まれることもある」と指摘しています。さらに「その組織の大いなる目標に心を動かされた顧客は、その目標を一緒に支援する『ファミリー』の一員になりたいと願うのである」と書いています。
ブランド論を学んだことがある人であれば、この「大いなる目標」がアーカーの言う、「ブランド・ビジョン」と似ていることに気づくかもしれません。つまりここで言う、組織の価値観とは、企業のブランド・ビジョン、つまり理念と密接な関係があることを指摘せざるを得ないでしょう。
企業ブランドは、商品ブランドに影響し、商品ブランドもまた、当然のように企業ブランドに影響します。業績が上がるということは、まさにそういうことなのです。
文:BRAND THINKING編集部
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