経営に正しいブランディングを。わかりやすく解説|ブランド シンキング

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経営に正しいブランディングを。わかりやすく解説

60代以上地方在住。ネットの苦手な人たちに、ペライチを届けたい。

【スタートアップのブランド論対談<ペライチ>第2回】

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このネット社会において、企業だけでなく、個人でホームページを持っている人も少なくない。しかしその中で、ホームページを作りたくてもパソコンが苦手で作れないという人もたくさんいる。そんな人のために、誰でも簡単に1ページのホームページを作れるサービスがある。それが「ペライチ」。サービスを運営するのは、株式会社ペライチの創業者である橋田一秀氏(写真)、山下翔一氏、香月雄介氏の3名。事業の立ち上げのきっかけやペライチのユーザーが広がることによって、世の中をどうしていきたいのかなどについて、パーソナル・ベンチャー・キャピタル代表で、BRAND THINKINGでも連載を持つチカイケ氏が迫った。

 

文:BRAND THINKING編集部 写真:落合陽城

 

リリース当初、我々が一番意識したのは「ファンづくり」。

香月:これを実現するために必要なのは、今まで大企業がやってきた、CMや新聞広告、デジタル広告ではなくて、信頼できる人からまず伝えてもらうこと。その信頼できる人たちというのは、ネットの苦手な人にとって身近な人たちのことです。例えばお母さんだったらママ友のような距離の近い人です。従来のように、マーケティングやITの専門家から伝えてもらうのではなく、ママ友ぐらい身近な人に教えてもらうということが、とても大事になります。しかももうひとつハードルがあって、その身近な人は、「これやりなよ」と一方的に言うような人ではなく、「一緒にやろう」と寄り添ってくれる存在であること。この2つが大切で、そういう人たちをいかに巻き込んでいくかということで生まれたのが、「47都道府県ペライチサポーター制度」です。

橋田:リリース初期からどうやってペライチの利活用を深め広げていくか?というのを創業メンバーで考えました。策としてはオンライン上で利用の拡大やペライチへの理解を深めていくこともできますが、やっぱり口コミが一番だよね、という結論でした。その中でじゃあどうやって口コミを広げていくのかを考えていきました。

山下:最初はペイドプロモーション(広告)はやらない。それはなぜかというと、リリースしたてのころは商品やサービス自体のクオリティが低いからです。当時は1日、2日ごとにサーバーが落ちていました(笑)。その状態で広告をうつと、ユーザーが離れていってしまい、機会損失になって逆にネガティブ広告になる。当時僕がマーケティング戦略をたてたときに1番意識していたのは、PRとそのコアとなるファンづくり。ファンづくりに圧倒的に時間を割いていました。

チカイケ:素晴らしいですね

山下:例えば、僕たち創業メンバー3人が、各々繋がりのある人たちに直接想いを伝えたり、僕がオンライン上でサービスをリリースしてから2年間、1日も休まず、ヤフーリアルタイム検索で、「ペライチ」とつぶやかれた投稿にはほぼ全部「いいね」をつけたり、コメントをしたりして、ファンづくりのためにコツコツ頑張っていました。中にはペライチはデザインの自由度が全然ないとかネガティブなコメントもありました。そういうコメントをくださっている方には、「ペライチのサービスは、地方のリテラシーの低い、60代以上のおじちゃんやおばちゃんたちを助けたいと思ってやっています。そういう人はデザインの自由度を持たせてしまうと作れないんですよ」。とおことわりを入れた上で、「今はデザインの自由度はあまりありませんが、〇〇さんのようなプロの方にも使っていただけるようなサービスに成長していきたいと思っているので、ぜひ応援してください!」と言うと、とても応援してくれるんですよ。このようなネガティブな要素を最初の段階でポジティブに変えて拡散していくというのをひたすらやり続けました。

 

元気玉経営とは共感そのもの。

香月:地道に活動を続けていると、わざわざ遠方から、「会いたいです!」と言って来てくれる人が現れたり、どんどん応援してくれる人が増えていきました。やっていることはデジタルなんですけど、心はアナログというか。人を大切にするということを心がけていました。一つ一つのご縁をちゃんと大切にして、そこからファンを地道に作って、広めていく。ファンになってくれた人の多くはサポーターになってくれます。

山下:これはユーザーを広げていくことだけでなく、開発の部分も同じでした。手伝ってくれる人を橋田の巻き込み力でどんどん集めて、リリース前には20人以上の関係者が手伝ってくれました。しかも全員無償で。

橋田:そのときは猫の手も借りたい状態でした。僕らもお金がないからどうしようかというとこで、じゃあお金ではないところで提供できるものは何だろうかと考えたところ、スタートアップのプロダクトを一緒に開発する「経験」だったり、そういう形で僕らもお金だけではない価値を見出して、なんとかお手伝いいただきました。そのころから関わってくれているメンバーの一部は今も一緒に参加してくれています。みんなやらされているというかんじではなく、キャンプファイヤーのようなかんじで、楽しんでプロジェクトに参加してくれています。(笑)

山下:僕はこれを元気玉経営と呼んでいます。基本的に僕らはサービスを提供する会社と、サービスを使う人たちというふうに分けていなくて、世の中を良くするために、いっしょに育てましょうというスタンスでやっています。これから、より個が生きてくる時代において、企業がなんのためにあるかというと、企業にビジョンや軸があって、そこに共感する人たちが集まる。自分ひとりじゃ到底できないことを組織になることによって、それを実現して大きな価値を生んでいくためだと思うんですよ。だから僕は「共感」さえあれば大抵のことは何でもできると思っています。

香月:弊社は今40人くらいの組織なんですけど、例えばカスタマーサポートの社内スタッフはつい最近まで一人しかいませんでした。毎日100件〜200件の問い合わせがきていたのにです。もちろん一人でその問い合わせを捌ききれません。なぜそれができているのかと言うと、問い合わせの8割をサポーターが返してくださっているからなんです。

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サポーターが増えれば、世の中がよくなる。

山下:ある時フェイスブックで山下チームに入っていっしょにお仕事しませんかと投稿したところ、全国から50名ちかくの方から返事がありました。中には「いますぐ辞表をだします!」と言ってくださった方が複数いたり「静岡から通います!週7日!」と言ってくださった方もいました。今ではそういうペライチファンが全国にいて、しかもサポーターさんの認定もサポーターさんにお手伝いいただいています。自立して回っていく仕組みができているんですよ。先日、WEBの制作代行を20万円で行いますよということを、フェイスブックに投稿しました。その時にファンの方が「じゃあお願いします」と連絡をくれて。その方に「どういうページつくりたいですか?」と聞いたところ「うーん、まだ全然頭にないですね。」と言われ、その上、「ペライチさんが好きなようにページを作ってください」と言われました(笑)。でもその方は本質を捉えていて、「価格」じゃなくて「価値」で考えているんですよ。その価値も自分にとって価値があるというよりも、世の中に対して価値のあるものを作りたいと思っていて、我々が作りたいと思っているものを作ったほうが世の中に価値を生み出せるんじゃないか、と考えられていたんですね。

橋田:そういう利他の精神というか、自立した人がとてもサポーターには多いんですね。たぶんペライチをそういうふうに思ってくれて手伝ってくれている人は自立しているからこそ、そういう行動ができると思うんですよ。

香月:自立することがプラットフォームの役割の1つかなと思っています。ユーザーさんって最初何もできないところから始まって、そこからページを作れるようになって、売上が上がるようになっていきますよね。そうなると、お礼として何か返したくなってくるんですよ。その受け口としてサポーター制度があると思っています。サポーターさんは見返りを求めてやっているわけではなくて、喜んでやってくれているんですよね、自立しているから。なのでサポーターが増えれば増えるほど、世の中がよくなっていくと思うんですよ。

 

(つづく)

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代表取締役 橋田一秀(写真中央)
東京理科大学卒業後、株式会社NTTデータに就職。1年半で退職し、株式会社うるるでほぼ未経験ながらエンジニアとして就職。4年3ヶ月の勤務後、山下氏、香月氏を誘い、株式会社ペライチを創業。

取締役 山下翔一(写真左)
広島大学卒業後、株式会社ライツアパートメントにて、プロデューサー、WEBチームリーダーを歴任。中小企業から上場会社まで30社以上の経営戦略、マーケティング、PRを請け負う。株式会社ペライチでは、長期的なミッションやビジョンの言語化、経営戦略、マーケティング・PR戦略、サポーターコミュニティやセミナー周り運営、法人支援部および省庁や企業や自治体等とのアライアンス等を担当。

取締役 香月雄介(写真右)
中央大学を卒業後、新卒で制作会社にiOSエンジニアとして勤務。その後1年ほどフリーランスを経験し、エレビスタ株式会社の設計・開発・運用を担当。
株式会社ペライチでは、主にプロダクトの開発を担当。

chikaike

 
チカイケ 秀夫

パーソナル・ベンチャー・キャピタル代表。企業ブランディングパートナー/社外CBO(チーフ・ブランディング・オフィサー)。一部上場IT企業でベンチャー立ち上げ、グロースハック、企業理念策定や代表直下でグループでのさまざまなプロジェクトを担当。そこでの『ブランディング』を通して、現在は、個人/スタートアップ/ベンチャーへの支援を行う。

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