経営に正しいブランディングを。わかりやすく解説|ブランド シンキング

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経営に正しいブランディングを。わかりやすく解説

流行りには流されない。自分たちの信じた辛口を、愚直に貫く。#1

【長寿企業研究-太冠酒造 前編】

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創業200年が珍しくない酒の世界。その中でも創業140年の太冠酒造は比較的新しい存在だ。しかし一般の企業からすれば、100年以上続く企業は非常に稀だ。果たして長く続く要因はどこにあるのか。常にチャレンジし続ける太冠酒造株式会社取締役社長の大澤氏に、さまざまな取り組みについて話を聴いた。

 

海外への展開は必然の流れ。

——–今年は東京国税局の鑑評会で「大吟醸太冠」と「純米大吟醸甲州利右衛門」が入賞、料理に合う日本酒を競う「第1回酒友グランプリ2017夏」でも準グランプリになり、改めて太冠酒造の評価が上っているように思います。

受賞ってのは、運が半分だから。もらえたらうれしいけど、もらえなかったからといってどうかということもないんですよ。でも正直迷惑になるもんじゃないし(笑)、もらえばうれしいしので、極力チャンスがあればどんどん出品していきますよ。味を向上させる上で、うまく利用できればと思っています。海外の賞への出品もこれから検討したいですね。輸送の問題とか高額な出品料の問題もあるので、1つずつクリアしていければと思っています。ただ、海外への販売は積極的に展開しています。国内の吟醸酒の需要は少しずつ上ってはいるけど、昔に比べれば圧倒的に冷え込んでいます。海外へ活路を見出すのは当然といえば当然。何年も前からやっていたので、チャレンジしていますね!と言ってくれる人もいるけど、必然の流れがきているのかな、と思います。これだけ世界中から日本食が注目されているというチャンスも来ていますからね。

 

ターゲットは明確化して狙うべき。

——–今でこそ多くの酒蔵が世界へどんどん販売を拡大していますが、太冠酒造さんとしてはそういう波が来る前からアジアへの展開をされてきました。

今では多くのご贔屓さんができてきました。例えば台湾のとある企業は日本のおいしいお酒を接待に使いたいと、いつもウチのお酒をつかってくれます。台湾は今、日本酒の需要がとても上ってきていますね。海外に行けば、日本酒はだいたい日本の3倍価格で取引されています。純米大吟醸なんて、日本でも高いのに3倍ですよ。一般的なスーパーで取り扱っている場合もありますが、そこでも3倍程度する場合もあります。それだけアジアの各国も富裕層と呼ばれる人たちが出てきている証拠でしょう。そういう小さなニーズかもしれないけど、そこに私たちの酒がフィットすればいいと思います。ターゲットはしっかり明確化して、狙っていかないと届かないですよ。吟醸系は手間がかかるから、ホント大変なんだけどね(笑)。もっと高く売りたいくらい。でも高すぎても売れないからね(笑)。

BRANDTHINKING171009-1-77受賞した大吟醸の太冠

 

流行の先をつくれなくても貫く。

——–今、太冠酒造として最もこだわっているところはどこですか。

獺祭で日本酒ブームが久しぶりに来ていますが、その影響もあって日本酒は今、圧倒的に甘口傾向です。ブームには必ず波がありますし、日本酒は本来、辛口が基本だと思っています。甘口がブームだからと言って、それを狙うのもひとつの考え方だけど、日本酒は本来食中酒。食に合うものが本質だと思いますよ。だとすれば、飲んでいてスッキリとするものが一番合う日本酒。食材をフォローするという考え方で日本酒をつくっています。この日本酒ブームで、日本酒がもっとポピュラーになってくれば、多くの人の舌が慣れて、甘口だと今度は重さを感じるようにもなってくると思います。私自身も杜氏も辛口が好きというのもありますが、「スッキリ辛口」にこだわってつくり続けていきたいですね。本当はそれで流行の先をつくれればいいんだろうけど、それは簡単なことではないからね(笑)。つくれないにしても、貫くことはブレずにしていきたいと思っています。

 

聴き手・構成:BRAND THINKIKNG編集部 撮影:大堀力

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大澤慶暢 Yoshinobu Osawa
太冠酒造株式会社 取締役社長
東海大学理工学部航空宇宙学科卒。当初は自動車の設計に関わるエンジニアとして働く。30代前半の頃、蔵元として太冠酒造へ入社。5代目蔵元となる。8年前から山梨県で初めて山田錦を地元農家と一緒に栽培し、産地銘柄の登録まで行う。米づくりから関わる酒造りを一貫して進めてきた。近年はアジア地域を中心に積極的に海外への販売を行っている。

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