【ロットのブランド論 第3回】
ロットは埼玉県戸田市を中心に、飲食店を30店舗を展開する会社。戸田公園駅の周囲100メートル以内には7店舗を構える高密度ドミナント出店を行う異色の企業だ。その背景には、「埼玉を元気にする」という明確な企業理念がある。栄枯盛衰の激しい飲食業界で成長を続ける秘訣とは何か。創業者の田子英城氏にこれまでの歩みを聴いた。
埼玉以外には出店しない。と決めた。
——理念に「埼玉」を明確に掲げたことで変わったことはありますか。
ロットとして、もう埼玉以外には出店しないということです。この迷いが消えましたね。実際に、僕らの手法は、ドミナントを超えて、超高密度ドミナント出店と言われています。戸田公園に7店舗、北戸田に7店舗(いずれも2016年12月現在)です。外食の常識からは大きく外れている。でもそれは、理念に「活気ある街づくりに貢献します」と明確に書いてあるからなんです。地域を限定して、街づくりの観点に立って出店を考えると、同じような店はいりません。だって、100メートルも離れていないのに、同じ看板の店があってもいかないでしょう。ふつうどっちかになりますよね。今日はイタリアンな気分、次の日は和食、とその日の気分で行きたい場所も変わりますし。ということは、いろんな業態のお店があったほうが、街も活気づいていくと思うんです。だから、僕らは近い距離に、違う業態を出します。「食を通じて、街を活性化する」を実践すると、結果的に非常識かもしれないけど、「超高密度ドミナント」という出店手法になるんです。戦略から考えたわけじゃないんですね。理念を決めて、その結果、戦略がそうなったと。ここが他社とは違う部分かもしれません。
昇給、昇格、報奨、教育、すべてを理念と結びつける。
——従業員に理念を浸透させていくためにどんなことをしていますか。
理念って、言語化して、唱和しても、暗記はできても日々の仕事には成果が現れにくいと思っています。だから、昇給も、昇格も、報奨も、すべてを理念と結びつけて運用しています。まず、「ROT WAY」を一人ひとりが実践することで、「理念、ビジョン、ミッションを達成します」。と明文化して言い切っているんです。その上で評価制度に落とし、どこまでできたらリーダーで、店長で、と細かい基準を決めています。アルバイトの評価基準も明確に決めています。年間のMVP表彰なども、社員部門、アルバイト部門と分けて表彰することでモチベーションが向上してほしいなと。でも昇格すればするほど、自然と「ロットらしい」働き方ができる社員に育っていきます。「評価」をフォローする意味でも、教育制度の一貫として「ロット大学」と命名して、理念や店舗経営についての勉強会を定期的に開いています。誰でも意志のある人間には門戸を開いています。昔は私たちが中心で講師をしていましたが、今はもう、店長たちが講師になって社員の間で運営しています。さらには、埼玉の酒蔵や生産者を訪問することもありますね。あとは、毎月全社員と僕が面談しています。これは創業以来ずっと続けてきています。
社長交代という、ROT WAYの実践。
——15周年を期に社長交代。ここにはどういう意図がありますか。
「常にカイゼン、常に前進」というROT WAYがあるのですが、言うなればそれの究極的な実践です。私の個人的な気持ちとしては、社長が交代する組織って、自分だったらとってもモチベーションが上がるなあ、ということ。自分の年齢で、創業経営者ならまずやらないですよね(笑)。聞いたことがない。だからおもしろい、というのもあります。でもそうやって自分が自ら新陳代謝することで、「自分も社長になれるチャンスがある」と思ってほしいですね。雇われ意識をなくしたいし、自分たちの手で埼玉を活性化していくことにコミットしてほしいんです。理念を決めても実践されない組織が多い中で、本当の意味でそれができるロットでありたいと思っています。社長交代の唯一の条件は「潰してもいいから、チャレンジしろ」です。逆にチャレンジしなかったら、殴り込みに来るぞ、と次の社長(山崎将志)には伝えています(笑)。私たちは常に具体的に目標を描くことで、すべてその通りに実現してきました。だからその醍醐味を後輩たちにも味わってほしいし、自分が「次へ行く」ことで、必ず自分たちを超えていくような世代が育つとも考えています。この15年は食にフォーカスして成長してきた15年でした。このあと、僕は埼玉の「衣(癒)」と「住」の活性化を目指すべく、グループを次のステージへと導いていくつもりです。
聴き手・文:BRAND THINKIKNG編集部 撮影:梅原 渉
株式会社ロット 代表取締役 田子英城
大学在学中の2001年に会社設立。何もない戸田を元気にしたいと、戸田公園駅に今もある「Café & Dining SUN」をほぼ手作りで出店。社員に信じて任せる手法を貫き、直営で30店舗を展開するまでに。2017年、山崎将志氏へ社長交代。新たなステージへ、事業展開を目指す。
※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して弊社は一切の責任を負いません。