【大工の会、伝統を明日へ 後編】
大工は一匹狼もしくは、自分のグループをつくり、群れない。なんとなくそんなイメージを抱きがちだが、大工を始め建築に関わる人間が集い、「若手大工の会」として活動をしているユニークなグループが山梨県にある。南アルプス市を中心に活動する彼らは、昔からある大工の技術を未来に伝え、大工や建築に携わる人たちを増やしたいという大きな志を胸に立ち上がった。
聴き手・構成:BRAND THINKIKNG編集部 撮影:新津 ゆき(南アルプスLOCO)
圧倒的な技術力。できないことなんてない。
——–「大工の会」の強みはどの部分にあると考えていますか。
小林:買い手と造り手が一緒というのが大きいでしょうね。一緒の場所に住んで、一緒に暮らして、育っている。そうなると、その場所に建てる愛着って絶対に変わってくると思うんです。私たちは家を売って、造って、決して終わりじゃないと思っていますから、 信頼につながりやすいですよね。圧倒的に相見積も減りましたし。
野田:長いスパンでお客様とつきあっていけますし、不具合があればすぐに直すこともできます。気候も熟知していますしね。
望月:例えば一般的なハウスメーカーと違って、技術力は圧倒的に高いと思います。この5社が集えば、できないことなんてなんだろうと思います。他社に無茶と言われた設計でも、できてしまうと思います。
中込:それはあると思います。大工さんでも、私たちの知っている大工は、個人の技術力が違いますからね。例えば、昔ながらの和室って手間がかかるので、今はかなり減っています。でもそういうニーズがあれば、すぐに対応できますね。
依田:ここがちょっとおかしいから見に来て、と言われればすぐにできます。場所も近いし、人もお互いに良くっているから、すぐに対応できますよね。
廣瀬:大手はマニュアルで簡略化されていることが多いのですが、新築はもちろん、複雑なリフォームでもこの5社であれば対応できるのが大きな強みだと思います。
大工の技を、未来へつなぐ。
——–これからの「大工の会」をどんなふうに進化させていきたいですか。
小林: 究極は大工の人口が増えることですから、大工の楽しさを伝えて、昔の良さを今に伝えていきたいですよね。昔は家の骨組みが完成すると「上棟式」といって、大工や施主が建物に立って、「餅投げ」をしたものです。それを地域のみんなで祝事ということで手伝っていました。そういう文化も復活させていきたいですね。そのためには提案力を上げて、時代に流されず打ち勝てるような組織体制をつくりあげていきたいと思います。
野田:大手はやはりプロモーションが上手なので、どうしてもそちらに目が言ってしまうのはしょうがないと思うんです。でも「大工の会」があなたの近くにいるよ、という認識を広めていきたいですね。お客様の選択肢がそれで広がればと思います。選ばれる組織にしていきたいですね。そしていずれ、地域の子どもたちが大工になって、この中の誰かの会社に入るなんてことが起きたら、素晴らしいことだと思います。
望月:地域のみなさんに「大工の会」をもっと知ってもらって、大工を育てる場所をつくりたいですね。まずは私たちが息子たちに世代に背中を見せながら頑張って、さらに若い大工の会ができたらうれしいです。
中込:そのためには、もっともっと「大工の会」で受注がとれれば、知名度も広がりますよね。木の家を増やすことで、林業の活性化、大工の活性化につながるので、そういう家をたくさんつくって、盛り上げて行きたいと思います。
依田:みなさんが言っていることに同感です。一番この中では歳上なので、足をひっぱらないように(笑)、職人魂でいい家をたくさんつくっていきたいですね。
廣瀬:同世代の仲間を、大工の会にひっぱりたいですね。まだ自分は20代なので、先輩たちから教えてもらいながら、横のつながりも増やしていければと思っています。
(おわり)
南アルプス市 若手大工の会
小林孝一(左から3番目)
有限会社小林建築所 建築士/南アルプス市若手大工の会 会長
望月 啓(左から2番目)
株式会社ハウジングモチヅキ 望月設計事務所 専務/南アルプス市若手大工の会 副会長
中込智和(右から1番目)
有限会社中込ハウジング 一級建築士/一級建築施工管理技士
野田年男(右から3番目)
有限会社野田ホーム・NH一級建築士事務所 所長
依田祐城(左から1番目)
依田建築
廣瀬将泉(右から2番目)
有限会社野田ホーム
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