社員エンゲージメントとは、職場の環境ではない

むすび株式会社の深澤了氏は、日本マーケティング学会カンファレンス2026で、論文「企業ブランドを高める従業員の共鳴構造の必要条件」を発表しました。全国の就業者502名を対象に、社員と会社の関係を「方向性の重なり」「企業ブランドへの共鳴」「仕事への満足」「エンゲージメント」の4つの側面から分析した研究です。
今回の研究から、社員のエンゲージメントは、単に職場への満足度を高めれば上がるわけではないことが見えてきました。
満足と共鳴は別のもの
研究では、「仕事への満足」と「会社への共鳴」は別の側面として整理されています。今の仕事内容や職場環境に不満がないことと、「この会社を人に勧めたい」「この会社で長く働きたい」と感じることは同じではありません。
待遇や働きやすさを改善することは必要ですが、それだけで会社への愛着やエンゲージメントまで高まるとは限らないということです。
起点になるのは「方向性の重なり」
研究で特に注目されているのが、「方向性の重なり」です。これは、社員自身が人生や仕事を通じて目指している方向と、会社が目指す方向がどの程度重なっているかを見る考え方です。
分析では、この重なりが深まることで、企業への共鳴や仕事への満足につながり、その先にエンゲージメントが生まれる構造が示されました。深澤氏の解説では、方向性の重なりがエンゲージメントへ与える影響のうち、約74%が共鳴や満足を経由した間接的なものだったとされています。つまり、満足度を直接上げようとするよりも、社員と会社が同じ方向を見られているかを確認することが重要だと考えられます。
どれか一つだけ高くても十分ではない
もう一つのポイントは、「方向性の重なり」「共鳴」「満足」のどれか一つだけが高ければよいわけではないことです。
研究では、それぞれに一定の水準が必要で、どこか一つが低いと、高いエンゲージメントにはつながりにくいことも示されています。そのため、組織サーベイを見るときも、平均点だけを見るのではなく、「どこが一番弱いのか」を確認する視点が必要です。
たとえば、社員満足度は高いのに、会社が目指す方向との重なりが低ければ、「働きやすい会社ではあるが、同じ未来を見ているわけではない」という状態も考えられます。
理念浸透にも関係する研究
今回の研究は、理念浸透を考えるうえでも参考になります。社員が企業理念を知っているだけでは、共鳴しているとは言えません。
会社が何を目指しているのかを理解し、その方向と自分自身の仕事や価値観に重なりを感じられるかが重要です。理念浸透も、「どれだけ覚えているか」ではなく、「自分との接点をどこまで持てているか」を見る必要があります。採用でも同じです。
会社の理念やビジョンを伝えるだけでなく、求職者自身が目指すものとどこで重なるのかを確認できれば、入社後のミスマッチを減らすことにもつながります。
企業が見るべきなのは満足度だけではない
社員のエンゲージメントを高めようとすると、福利厚生や面談制度などの施策に目が向きがちです。もちろん、こうした取り組みも必要です。ただし、その前に確認したいのが、「社員は会社が目指す方向を理解しているか」「その方向と、自分自身の目指すものに重なりがあるか」という点です。
会社と社員の方向性がつながっていなければ、制度だけを増やしても限界があります。今回の研究は、社員との関係を「満足しているか」だけで見るのではなく、「同じ未来を見られているか」まで考える必要があることを示しています。
社員の満足度を追求して考える
むすび株式会社の深澤了氏が日本マーケティング学会で発表した研究では、社員のエンゲージメントには、仕事への満足だけでなく、企業への共鳴や、会社と個人の「方向性の重なり」が関係していることが示されました。働きやすい環境をつくることは必要です。
ただ、それだけでは「この会社で働き続けたい」「この会社を人に勧めたい」という状態まで届かないことがあります。企業理念やビジョンを明確にし、社員自身が目指しているものとの重なりをつくる。これからの理念浸透やインナーブランディングでは、こうした視点も求められそうです。
より詳しく内容を確認したい方は、以下のリンクからお読みください。














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