採用は「選んでもらう」時代

採用活動では、これまで「まず母集団を形成すること」が基本とされてきました。
求人媒体に掲載する。スカウトを送る。説明会を開く。応募者を増やし、その中から自社に合う人材を選ぶ。この考え方自体は間違いではありません。
ただ、今の採用市場では、母集団を増やすことだけでは採用につながりにくくなっています。応募者が集まっても、選考途中で離脱する。内定を出しても承諾されない。入社してもすぐ辞めてしまう。こうしたことが起きれば、母集団の人数が多くても採用成功とは言えません。問題は、「何人集まったか」に意識が向きすぎて、「なぜ自社を選んでもらうのか」が弱くなっていることです。
この記事では、なぜ母集団形成だけでは採用が難しくなっているのか、これからの採用では何を考えるべきなのかを解説します。
今の採用では求職者も企業を選んでいる
採用活動を企業側から見ると、「応募してきた人の中から誰を採用するか」という視点になりがちです。しかし、求職者側から見れば、「応募した会社の中からどこに入社するか」を選んでいます。つまり、採用は企業だけが選ぶ場ではありません。双方が選ぶ場です。
そのため、応募者を集めるだけでなく、「この会社で働きたい」と思ってもらう理由が必要になります。給与、休日、福利厚生だけでなく、仕事内容、会社の考え方、社員、成長環境、顧客への向き合い方などを含めて比較されます。母集団を増やすだけでは、この「選ばれる理由」は作れません。
母集団を増やしても辞退されれば意味がない
採用では、応募数だけを追ってしまうことがあります。応募が10人から100人になれば、採用が改善したように見えます。しかし、その100人の多くが途中で辞退したり、内定を断ったりすれば、採用は決まりません。
たとえば、
100人応募
→20人面接
→5人内定
→5人辞退
であれば、母集団は大きくても採用人数はゼロです。
一方で、
10人応募
→5人面接
→2人内定
→2人入社
であれば、母集団は小さくても採用できています。
母集団形成を優先するとミスマッチが増えることもある
母集団を大きくしようとすると、採用メッセージを広げすぎてしまうことがあります。
「働きやすい会社です」「成長できます」「アットホームな職場です」「未経験歓迎です」できるだけ多くの人に興味を持ってもらおうとすると、誰にでも当てはまる表現が増えます。すると応募数は増えるかもしれません。しかし、自社に本当に合う人が増えるとは限りません。
入社後に、「思っていた会社と違った」「こんな働き方だと思わなかった」というズレが起きれば、早期離職につながります。採用の目的は、応募者を最大化することではありません。自社と相性の良い人と出会うことです。
「母集団」ではなく「活躍人材」を考える
採用で本当に必要なのは、多くの応募者でしょうか。それとも、自社で活躍する人でしょうか。企業が求めているのは、本来後者のはずです。それなら採用活動も、「どうすれば応募者を増やせるか」から、「どんな人が自社で活躍するのか」へ視点を変える必要があります。
自社で活躍している社員には、どんな共通点があるのか。どんな考え方を持っているのか。どんな仕事にやりがいを感じているのか。どんな価値観の人は定着しやすいのか。ここを整理すると、採用したい人物像が見えてきます。
そのうえで、その人に向けた採用メッセージを作ります。母集団形成の前に、「誰に来てほしいのか」を明確にすることが必要です。
採用ブランディングは「母集団を増やすこと」が目的ではない
採用ブランディングというと、応募者を増やす施策だと思われることがあります。しかし、本来の目的はそこではありません。採用市場の中で、「どんな会社なのか」「どんな人に合う会社なのか」「ここで働く価値は何なのか」を明確にし、自社に合う人から選ばれる状態を作ることです。その結果として応募が増えることはあります。
しかし、単純に応募数だけを最大化することが目的ではありません。むしろ、採用ブランディングが進むと、「自分には合わない」と判断する人が出てくることもあります。これは悪いことではありません。入社前にミスマッチを防げるからです。
母集団の「量」より「濃さ」を考える
これからの採用では、母集団の人数だけではなく、その中身を見る必要があります。100人の応募者がいても、会社への理解が浅ければ採用につながりません。10人しか応募がなくても、その10人が会社の考え方や仕事内容を理解していれば、選考の質は高くなります。
つまり、大きな母集団を作るのではなく、自社への関心や共鳴がある人の集まりを作るという考え方が必要です。応募数だけを見るのではなく、選考通過率内定承諾率入社後定着率入社後の活躍まで見ることで、採用活動の本当の成果が分かります。














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