経営に正しいブランディングを。わかりやすく解説|ブランド シンキング

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経営に正しいブランディングを。わかりやすく解説

クラウドファンディングのメリットはブランディングにあり #2-2 合同会社sunsunto(鳥取)

クラウドファンディングは、インターネット時代における新たな資金調達手法として注目を集めている。しかし、クラウドファンディングのメリットは、資金調達だけにとどまらない。リリース前から共感を集めることができるというブランディングにおけるメリットも見逃せない。「クラウドファンディングのメリットはブランディングにある」という仮説を、クラウドファンディングを実施した経営者へのインタビューを通じ検証する。

合同会社sunsunto(鳥取県大山町)は、地域密着の観光事業を展開するために2018年に創業された。旗振り役となっているのは地域おこし協力隊就任をきっかけに、町に移り住んだ東京生まれ東京育ちの佐々木正志さん(30)。

sasaki1▲合同会社susnunto佐々木正志さん(トマシバの実施地にて)

同社の位置する大山町は、中国地方最高峰の大山を中心に個性的な観光資源が豊かだ。日本一の肉質が認められた大山和牛、高い標高がもたらす良質のパウダースノーのゲレンデ、

1300年の歴史を誇る古刹など。グルメ・アクティビティ・カルチャーといった観光には欠かせない要素が満載だ。

しかし、大山の知名度は日本国内ではいまひとつ。2017年に実施された「鳥取県に関するイメージ調査(鳥取県庁)」によれば、5400人の調査対象者のうち1.4%しか「大山」について想起しなかった。

「大山の素晴らしさを広めたい」というピュアな思いで合同会社sunsuntoは、事業として、標高300mにある芝畑に宿泊する1日1組限定グランピング「トマシバ」を提供開始した。

宿泊料金は平日1組30,000/休日40,000円だが、1組限定ということから1年目の運転資金の確保が、資本をもたない佐々木さんたちにとっての課題だった。その突破口となったのが、クラウドファンディングだ。だが、クラウドファンディングがもたらしたメリットは、資金調達にとどまっていないことを佐々木さんは語ってくれた。

クラウドファンディングが顧客との関係性を強くする

――――どうしてクラウドファンディングを資金調達の手段に選んだのでしょうか?

 助成金や補助金も検討したのですけれども、僕たちのやりたいことにとって、不必要な枠となってしまうものばかりでした。僕たちは、やりたいことを少しでもぶらしたくなかったんです。なので、自分たちの言葉で僕たちのやりたいことを伝えて、使い道を自分たちで決められるクラウドファンディングは魅力的でした。

 また、サービスの潜在的な価値を確かめる意味がありました。僕たちの目標額は、クラウドファンディングの基準でみると高額でしたが、オールオアナッシング方式(目標到達時のみ資金調達がなされる)で、300万円を調達しました。この金額が集まれば、十分にニーズがあると思ったんです。この金額が集まらないようなサービスであれば、やる意味はないと思っていました。

 クラウドファンディングでは、資金以外のメリットも大きかったですね。地域内外からたくさんのお声掛けをいただきました。これまで知らなかったひとからもたくさんの支援をいただきました。

 でも、なにより大きなメリットだと思っているのが、これまでの関係性がより強固になったことです。これまで、支援とリターンというコミュニケーションのお蔭です。個人的にお金を寄付するというやり方は、日本ではなかなか気兼ねをするものだと思います。クラウドファンディングというプラットフォームを介することで、具体的な支援がやりやすくなったと感じています。

 ――――トマシバは、準備や運営に地域の協力が欠かせない思います。なぜ地域の協力を合同会社sunsuntoは引き出すことに成功していると思いますか?

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▲トマシバの実施地となる芝畑を佐々木さんに案内してもらった

 僕は、地域おこし協力隊として、大山町に移住してきました。ヨソ者から見れば、地域の問題は一目瞭然になることが多いのですけれども、それをすぐに伝えても意味がありません。コミュニケーションではタイミングが重要です。

 共通言語と共通体験。この2つがそろったとき、コミュニケーションは上手くいくと思っています。だから、地域おこし協力隊のときから、農家さんや漁師さんのお手伝いを積極的にしています。ワークショップを企画することもしています。

 実は、僕のブログも共通言語と共通体験のためのものなんです。僕のブログは、マスに向けたものではなく、訪れてくれた人とその人たちと接した人に向けての“公開された手紙”のようなものです。僕のブログには個人名がたくさんでてきます。そのため、「あの時、誰が、何をしてくれた」ということを後々思い出すことができるんです。

 様々な方法で、共通言語や共通体験を積み重ねてきたからこそ、地域からご協力いただけているのだと思います。

――――トマシバは認知から行動に至るまでのハードルが高い事業だと思います。このハードルを乗り越えるためにどのような施策を打っていますか?

トマシバが含まれる観光事業では、「来てください!」で終わっているケースが多いように感じます。一方、私たちは、具体的なアクションをともなうコミュニケーションを行っています。

例えば、既に訪問してくれた方を対象として、東京でクローズドのパーティーを開いています。招待者の友だちを含めて、毎回50人程度が集まっています。つまり、顔が見える関係性を中心として、友だちの輪を広げていっています。

そもそも、「来てください!」と声をかけても実際には来てくれないのは、行く理由がないからだと思います。パーティーで大山町のものを食べ、大山町の人を知り、友だちからオススメされれば、自然と大山町を訪れる理由ができるのです。

僕と似たバックグラウンドの人にしか、僕のメッセージは伝わらないと割り切っているんです。でも、友だちのメッセージなら伝わる。こうした友だちの輪を広げていっているところです。

 

ウェットな人間関係が持続的なブランドをつくる

トマシバ事業における顧客との関係性は、単なる商取引にとどまらず、人間的なウェットなつながりにまで及んでいることがわかった。顧客との関係性がウェットになれば、しがらみも生じてくるデメリットはあるものの、持続的なブランド構築につながる。ただ、このような関係性に至るまでは高いハードルが存在している。今回のケースでは、既存顧客を招待する定期的なパーティーに加えて、クラウドファンディングも人間関係の強化に寄与していることは見逃せない。

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佐々木正志

早稲田大学卒。広告代理店を経て、鳥取県大山町の地域おこし協力隊に就任。その後、個人事業主として観光ガイド事業を展開し、2018年に合同会社sunsuntoを設立。

長尾和也

 
長尾 和也

コンテンツクリエイター。トレンドとアクセス動向を踏まえた記事コンテンツを、30社以上の企業オウンドメディアにて発信。誌面では月刊文藝春秋にて無記名の観光コラムを掲載中。「世の中をもっとチャレンジングに」という思いからクラウドファンディングに関心をもち、クラウドファンディングライターとして邁進している。早稲田大学大学院商学研究科マーケティング・コミュニケーション専攻修了。修士論文は「消費者の独自性欲求」。

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