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【レポート】日本ブランド経営学会 Brand Conference研究発表会

 

丸々1日ブランド漬!

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2019年10月26日(土)、株式会社シー・エス・イーにて日本ブランド経営学会Brand Conference研究発表会が午前10時から開催され、約30名が集まりました。

日本ブランド経営学会は、ブランディングの視点から日本の企業経営を変えていくという志をもった学びの集まりです。なかでも今回のBrand Conference研究発表会は登壇者すべてが実務家(経験)を有しており、実践の中から得た知見を発表し合う場として、一般社団法人化して初の開催となりました。

まず最初に会場提供の株式会社シー・エス・イー様よりご紹介があり、その後、日本ブランド経営学会会長の上條憲二氏より、今年発足した日本ブランド経営学会の設立の背景、想いの話がありました。ブランド経営の本質は「想い」。だからこそ、この話から始まりました。これまでの学会活動を振り返りながら、この日本ブランド経営学会が社会に何をすべきなのか。学会のビジョンやミッションを紐解きながら、「ブランドをマネジメントするのではなく、ブランドでマネジメントする」ことの重要性を説きました。

現状のマーケティングや広告業界にまつわる課題、問題点を指摘しながら、これまで学会の毎月の勉強会(Salon)で議論し、参加者のみなさんから出た提言について、紹介し、学会が果たしていくべき使命と解決策についての提言を行いました。それらを挙げながら上條氏は「日本らしいブランディングの形があるのではないか」と話します。

最後に、日本ブランド経営学会自体のブランディングの10年構想を発表し、「ここにいるみなさんは参加者ではなく、実行者」と呼びかけ、より一層の会員のみなさんの学会への参加を促しました。

研究発表は全部で9テーマ。

あらためて、発表テーマを振り返ります。発表順に内容を簡単にレビューしていきます。

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企業理念の浸透を促進するブランド実践の概念とメカニズム
― アドラー心理学の応用がもたらすインナーブランディングの実践的仕組み ―
むすび株式会社 代表取締役 ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター 深澤 了
むすび株式会社 ブランド構築研究開発室 室長 ブランディング・ディレクター 嶋尾かの子

ブランド論にアドラー心理学を応用することによって、組織と個人の強い結びつきをつくり、組織の理念と個人の理念を重ね合わせることによって、組織にも、個人にもWINになる主体的な行動を生み出せるという「ブランド・プラクティス™」理論の発表を行いました。組織と個人が「信頼、尊敬、共感」をことで、「共同体感覚」が生まれ、理念が浸透しやすくなるモデルです。「社員に会社のファンになってもらうことが重要ですが、会社が社員のファンになることも重要」(嶋尾氏)。理念浸透を行う上での肝がここにあるそうです。

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「江戸と街ブランド~歴史と物語を地域資源とする『街ブランド』の再生~」
特定非営利活動法人 江戸・商店観光振興会 事務局長『浅草・歌舞伎街歩き』認定ガイド 和田哲郎

もともと大手広告代理店で営業を行っていた和田氏。過去手がけた事例などを紹介しながら、本題へと入ります。「その街のDNAを探すことを行ってきた」と話す和田氏。その行動そのものが「ブランディング」ではなかったか、と振り返り、それを再構成することで、街ブランドの再生へ寄与することを目的にしています。街ブランドの課題を「どの街に行っても、似たり寄ったりでよくわからない」と指摘し、「地勢、くらしなどのなかから、その街のDNAを見つけること」の重要性を指摘します。北千住、赤坂、九段などの事例を挙げ、それぞれの課題にどのように解決策を見出していったのかを紹介しました。「街の人が自信を持って、人を招ける街づくりをしていきたい」と自身の志を宣言し、発表を終えました。

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「創業者の原体験とコーポレート・アイデンティティ」
PARSONAL VENTURE CAPITAL.LLC 代表 チカイケ秀夫

すべての参加者がグループになり、自己紹介するところから始まるユニークな方法で始まりました。チカイケ氏はインターブランドのブランドランキングを引き合いに出し、日本企業は1社のみと指摘。「世界において日本企業の影響力は薄れてきている」と課題を指摘します。いまだに品質重視でしか商品をつくれないことを原因とし、それを打ち破るには「創業者の原体験」がすべての起点であると強調します。その例として「シャネル」の事例を挙げています。質問も多岐にわたり、双方向なやりとりが多かったチカイケ氏の発表でした。

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「ブランドストームと共ブランディング モデル〜 ブランディング構造の多様性と変化について 〜」
四街道市役所 シティーセールス推進課 課長 岩林誠

岩林氏の論文はふたつの着目点から始まっています。①「企業のブランディングは、そのままプレイスブランディングに適用できるのか、違いがあるならば、どこが異なるのか?」、②「ネットを中心とした消費者の言動がブランディングに影響を及ぼしている。そのことにどのように対処し、ブランド管理していけばよいのか?」。①に関しては「プレイヤーと動機の違い」を挙げます。企業は利益の追求が最終的にありますが、プレイスブランディングに関してはそれがないと指摘します。②に関しては「ブランドストリーム」を挙げます。ネットでのアップはコントロールのしようがなく、制御しきれないと指摘し、その方策として「ブランドストームと共ブランディングモデル」を提示しています。ネット社会ではそもそもブランドを管理しきれないことを前提とし、マネジメントではなく、ブランドディレクションを行っていくべきだと強調しました。

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「中小企業の経営力強化における外国人人材の活用」 
―多文化共生の形成とダイバシティマネジメントの取組―
金属加工企業 取締役 経営企画室長 乗松和宏

人手不足、採用難の現状を挙げ、外国人労働者の活用が増えていることを指摘します。「人手不足」、「人材不足」から外国人材の活用による多文化共生とダイバーシティーマネジメントの必要性を説きます。乗松氏は自社を事例にどのような取り組みをしていったのかを発表。1997年に中国に、2013年にタイに現地法人を設立。100%出資というところが非常にポイントなのだそうです。また「世界の常識は日本の非常識」と指摘。視点が多様化することで、経営力が強化されると強調します。

 

ここから2つはライトニングトークでの発表。5分でブランディングに関する考察を発表し、参加者と議論しました。

【ライトニングトーク】

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「記憶に残る」をデザインする。
株式会社クオーターバック 代表取締役ブランディングファシリテーター 山田裕一

山田氏はブランドを「幸せの記憶によってつくられた、自分にとって信じられる存在」と定義。現在は「めちゃくちゃ覚えて、めちゃくちゃ忘れる」時代であるとし、例えばいつもらった名刺か忘れるということを事例として挙げます。そこから、名刺をいかに印象づけるか、という観点で自身の事例を紹介。破く名刺や斜めにすると文字が浮き出る名刺などの例を出し、「記憶に残す」重要性を示唆します。「情報爆発の時代に、どのように記憶の中に残っていくか」ということについて考える必要があるとし、幸せをどうつくるか、について考えなければならないとしました。

【ライトニングトーク】

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「思い」はコミュニケーションを変える。
HOKAGO.com /某金融系シンクタンク 渥美智之

流山市でのお父さんのコミュニティづくりをしている渥美氏。流山市が「都心から一番近い森のまち」、「母になるなら流山」のキャッチコピーにしているからこそ、お父さんが住みにくくなっている現状もあるそうです。今回発表したチカイケ氏とともに、原体験ワークを行うことで、コミュニティの活性化を行っています。「『ブランディング』でコミュニティを盛り上げ、共通の想いや価値観を見い出し、お父さんとそれを取り巻く世界に幸せな未来を目指していきたい」。と話しました。

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「実践コーポレートブランディング-悩めるブランドマネージャーを導く10か条-」
齋藤嘉昭

メーカーで海外営業、経営企画部門を経て、コーポレートブランディングの戦略構築を担当した経験から、ブランディングの「青い鳥」は社内にこそあると言い切ります。自身の企業での取り組みを詳細に共有し、その経験から、10項目のブランディングの掟を挙げます。徹底的に社内に向き合い、コンセンサスを得、社外的な一貫性の重要性を強調します。ライティングやロゴなど、日本語、英語含め、社内担当者が細かい部分までチェックし、腹落ちした上で、それぞれ社内のメンバーが「自身が決めた」と思える演出が重要性であるとしました。

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「ブランドコンセプトを発信するための新たなスタートライン-大学の実践的ブランディングを元に考察・検証-」
学校法人東邦学園愛知東邦大学 入試広報課 課長 三輪哲也

人気急上昇中の愛知東邦大学。18歳人口が減り続ける中で、地方の小規模大学がどのように生き残るか、というひとつの選択肢がブランディングでした。ひとつのコンセプトをどのようにして貫くか。このリアルな悩みがあったことを話していただけました。ブランドとは「志からはじまったヒストリーとチームの意思を再確認し、自ら未来をつくりあげるもの」と三輪氏なりに整理。どのように学外へ愛知東邦大学の志からはじまるヒストリーを広めていくのかを具体的な取り組みで紹介。広報ではなく、教育と自身の役割を位置づけ展開。アンケートの結果で高校生からの評価が急上昇する結果となりました。

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すべて発表が終わった後は懇親会が開かれ、今日の発表について参加者同士がそれぞれ感想を言い合ったり、意見を交わしたりと活発な会となりました。

次回、勉強会Salonは通常通りに場所を戻して11/21に開催。こちらの参加募集もすでに行われています。
https://peatix.com/event/1365008

 

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上記の発表資料、論文は下記より12/25までDLできます。

発表資料
https://3.gigafile.nu/1225-m13512d38d34d3de9fe9611be698103f1

 

文・撮影:BRAND THINKING編集部

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