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経営に正しいブランディングを。わかりやすく解説

嫌いだった日本酒で、新しい人生がはじまった。#1

【いにしえ酒店のブランド論】第1回

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東京・杉並区方南町の路地裏に、日本全国の古酒好きが集まる熟成日本酒を専門にしたお店がある。その名も、「いにしえ酒店」。2016年のオープン依頼、多くの古酒・熟成酒好きに愛されるお店だ。新酒が注目されがちな日本酒の世界で、なぜ古酒・熟成酒の専門店をオープンさせたのか。創業の経緯や今後の展望について、店長の薬師大幸氏に訊いた。

 

聴き手・文:BRAND THINKIKNG編集部 撮影:落合陽城

 

時間が経つことで美味くなる酒がある。 

———–創業の背景を教えてください。

もともとお酒はあまり飲めなかったのですが、嫌いではなくて、甘いお酒やカクテルを飲んでいました。その流れで、マッコリやどぶろくを飲むようになって、清酒を飲むようになったのがはじまりですね。お酒が好きになるとボトルを買うようになりますよね。ただ、下戸なものだから4合瓶を飲みきるのに、3週間くらいかかる。華やかな香りが主体のお酒は時間が経つと味が悪くなり、最初に飲んだ感動がなくなります。とあるお店でそんな話をしていたところ、店主からゆっくり飲むことを楽しむ古酒や熟成向きのお酒があることを教わった。それが古酒・熟成酒との出会いです。男って、わりと収集癖があるじゃないですか。熟成向きのお酒は飲みかけのボトルを放置しておいても前述のお酒と違い、劣化ではない酒質の変化がおこる。そのうち、家の中が飲みかけのお酒だらけになってしまう。これは商売にしたら面白いのではないかと思って酒屋をやることにしたのが数あるきっかけの一つです。それに、古酒・熟成酒は買おうと思ってもあまり売っていません。都内だと品川にある酒茶論のような専門店に行かないと飲めません。圧倒的に古酒・熟成酒を口にする機会は少ないのですから、そこ特化すれば日本酒の幅も広がるのではと思い、そこに商機を感じました。

 

こんなに好きなのは、嫌いだったから。

———–日本酒にそこまで惹き込まれたのはどうしてですか。

日本酒は匂いを嗅ぐのもためらうぐらい嫌いでしたが、キッカケがあって嫌いなものを好きになったときの落差で惹き込まれてしまいましたね。日本酒を飲み始めたのは2010年頃からでした。それから2、3年であっという間に古酒・熟成酒にのめり込みました。もともと嫌いでしたから、日本酒の臭いなんて全部同じにしか感じられなかったのです。アルコール臭い。それが、最近の日本酒は香りが華やかで、味わいは柔らかく甘いものから、甘酸っぱいものまで多様です。今の日本酒業界は飲みやすさを追求して入り口を広げる努力をしています。それにまんまとハマり、気づいたら酒屋にまでなって売る側になっていたわけですから業界からすればしてやったりでしょうね。ただ、間口は広くても奥が浅い。創業の背景でもお話しましたが、古酒・熟成酒はその奥行を担っていると思います。いわゆる「深み」の部分を知ってしまったわけですから抜け出すのは容易じゃないですね。

 

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特化することで道が拓けた。

———–なぜ古酒・熟成酒に特化しようと思ったのでしょうか。

そうやって、古酒・熟成酒の魅力にとりつかれたわけですが、実際飲み始めると古酒・熟成酒の地位の低さに愕然としました。消費者として楽しむ分にはありがたいのですけどね。なにせ、50年熟成された昭和43年のお酒が1万円以下で買えるのですから。世界の成熟した食文化の中には熟成されたお酒を楽しむ文化が存在します。日本酒は色々な歴史的背景からどうしても新酒偏重になりがちで、熟成が一部の愛好家だけが楽しむ稀有な存在になっている感があります。無形文化遺産に指定されたことで日本食が世界で今以上に楽しまれるようになったとき、その傍らに寄り添うお酒の中に熟成酒があったらいいなといった思いがあります。そうはいっても商売ですから、理想だけではなく、食べていかなくてはいけないですからね。お店を始めるにあたって色々試算はしましたが、いまの仕組みではどう頑張っても儲からない。取引先にも大丈夫?と心配されるぐらいですから。既存の日本酒マーケットを変えようなどと大きなことは考えていませんが、古酒・熟成酒に特化して、今までとは違った取り組みをしながらそのマーケットを作れたら面白いだろうなと、古いお酒を扱いながら未来を作れる楽しみが魅力の一つかもしれません。

(次回は、5月18日(金)に更新します。)

 

_46D0497 いにしえ酒店 店主 薬師大幸

もともとIT企業で業務系システムの仕事をしていたが、日本酒と出会い、2016年11月に「いにしえ酒店」をオープン。東京杉並区方南町の路地裏にある小さなお店には、日本全国の「古酒」好きが多く集まる。

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