経営に正しいブランディングを。わかりやすく解説|ブランド シンキング

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経営に正しいブランディングを。わかりやすく解説

共に向き合う、人と心と時間が最良の店づくりへの秘策。【後編】

人気居酒屋『庄や』『日本海庄や』を全国展開する株式会社大庄が、2019年12月、池袋西口にオープンした新業態『お魚総本家』。「腕に、魚に、こだわり抜く」をビジョンに掲げ、選りすぐりの鮮魚と職人技を売りとするお店は、既存業態にも通ずる大庄の創業精神をベースとしながら、リブランディングによって新たな価値を付加して誕生。この新しい店づくりの過程やブランドが今後目指すビジョンについて、株式会社大庄の営業本部東京第二支部支部長の腰原貴志氏にお話を伺った。

聴き手・構成:BRAND THINKING編集部 撮影:落合陽城

目線が同じ方向を向いていることが理念浸透の証に。

——–開店後、理念が浸透していると実感したのはどんな時ですか。

開店当初、現場から聞いたのは、「私達がやっていることは正しいのか」という不安の声でした。お客様の反応や1日に来店していただける数は順調でしたが、腕に、魚にこだわりぬいている私達というのが、お客様に本当に伝わっているのかということに自信が持てないと。ですが、お客様として利用していただいた社内の営業以外のセクションの方達にも評価をいただけたことで、「これでよかったんだ」と自信を持つことができるようになりました。また今回、新型コロナウイルスの影響下で、1カ月半の休業を余儀なくされましたが、営業再開にあたっては、ランチの営業をやりたいという意見も現場から生まれました。そういう声がお店の方からもらえたというのは、嬉しかったですね。

当初、ランチの営業をやっていなかったので、メニューもないわけです。そんな中、メニューも自分達でこしらえて販売する。そういう努力や姿勢が見られたというのは、スタッフがどちらの方を向いて仕事に従事しているかということが示されたということです。会社としては、やはり目を向ける目線は、お客様、社外の人達に対する目線であってほしいと思っていますが、同じ方向を向いていることを感じられた出来事でした。

 

創業精神やスタッフの心根を大事にする。

——–イレギュラー対応を迫られた時、実施に踏み切ることができた背景にはどんなことがあったのでしょうか。また、スタッフが目線を揃え、想いを共有することは、実際の売上につながっていると感じますか。

お客様第一主義や創業の精神というのは、「見返りを求めない愛」ということで先代が言っていたことです。今の当社のトップも、利他の精神を私達に説いています。やはり、こういった想いが当社の根底にはあるのだと思います。東日本大震災の時、電車が止まり、お客様もスタッフも帰れない、電話もなかなかつながらない状況でしたが、本来は深夜営業しない店舗も自発的に朝までお店を開けて、寝泊まりする場所がないという方に空間を提供した店舗もありました。そういった経験をしているスタッフもこの池袋店にはいます。会社としては教育も大事ですが、スタッフ一人一人の心根を大事にしていく。その方向性が間違っていなければいいんだというスタンスも大事だと思います。こうした姿勢は、数字にもつながることだと思います。12月のオープンから2月までは数多くのお客様にご来店いただいていましたが、3月中旬になると新型コロナウイルスの影響をはっきりと数字で感じ取れるくらいの影響がありました。ですが、お客様一人当たりの単価がぶれなかったんですね。これは、お客様のお店への期待値と私達が提供しているもののギャップが、そんなにないからではないかと捉えています。

人事のパワーバランスと共に過ごす時間が最良の店をつくる

——–今後の店づくりについてですが、これまでと異なる新しい業態、誰も経験したことのないことを行うにあたって、どんなことに気をつけて、チームや店づくりに取り組んでいますか。

やはり、既存の店舗と当店で決定的に違うのは、エース級のベストな人選を選んだということです。ただ、エース級の人材を組んだからオーケーというわけではなく、パワーバランスが大事だと思います。調理場だから、社員だから上、アルバイトだから下ということではなく、バランスを考えてどう編成チームを調整していくかに重きを置いています。統括リーダーや店長、調理長のとる態度や姿勢も大事ですし、幸い、店長や調理長が協調性の高い人物なので、今の所うまく歯車が合っていると感じています。あと大事なことは、同じ時間を共有することです。時間が長ければ長いほどいい効果があると思いますが、開店までのプロセスの中で、店長も調理長も同じような時間を共に過ごしてきたということが大きいと思います。二人の感性がいいということももちろんありますが、同じ釜の飯を食うじゃないですが、毎日お店で一緒に話を何度もしたり、何回も料理や接客の練習をしたり、そういう密な時間をつくれたことが結果的にいい影響を与えたのではないかと思います。

一人一人のお客様と向き合う延長線上にみえてくる未来。

——–今後、『お魚総本家』をどういうブランドにしていきたいか、目指す所を教えてください。

新型コロナウイルスの影響で、新しい生活様式やニューノーマルな経営のあり方などが求められ、これまでの常識がこれからの常識である保証はもうないわけですから、柔軟な対応の必要性を感じています。ビジョン、ミッション、バリューなどお客様にほどこす行動はブラさずに継続し、まだまだ数は少ないかもしれませんが、一人一人のお客様に向き合うことを大切にしながら、毎日仕事をさせていただきたいですね。その延長線上に、世の中の情勢が上向けば、2号店目という話も出てくるかもしれません。そうしたら、2号店目が本当の勝負という考え方もありますので、やはり一生懸命取り組んでいきたいと思っています。(おわり)

腰原貴志
株式会社大庄
営業本部東京第二支部支部長

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